西池袋ムラサキハウス

撮影：2017年11月
自転車で馴染みのない街の路地をでたらめに流してみることがある。迷子になった時のめまいに似た感覚や、突如知っている場所に出る驚きが快感だ。紫色のトタン貼りの壁を持つこの家も、そうやって迷い込んだ池袋の一角で遭遇した。ロール式の庇とオロナミンのポスターから、元は雑貨屋ではなかったかと思われる。それにしてもこんな紫色の家というのは初めて見た。2階バルコニーの白い手すりの可憐なデザインも壁の色と良くマッチしていて素晴らしい。左右一杯にきっちり並んでいいる窓と共に確かな美意識を感じる建築物だ。

行き先案内板？

撮影2018年9月
この手の看板の正式名は何というのだろう？いやに昭和の雰囲気を残すこの看板。これを見るとどういうわけか上京したての、東京の風景が珍しかった頃の新鮮な気持ちが蘇る。山手線の駅名が入っているせいだろうか。左は←が看板の形に上手く嵌まっているのに右は対称性が崩れても読みの自然さを優先している。表記を「次は」ではなくて「あっち」にすれば対称にできるかと思うが、それも堅すぎかもしれない。

駒込・消えたアルパ

撮影：2011年8月
2011年8月、気になっていたアルパのその後を見に行ってみた。あの見慣れた建物群はきれいさっぱり消滅している。そこには広大な空き地が広がっていると思われるが、高い塀がはりめぐらされており中の様子は分からない。塀に貼られた建築計画書を見ると、13階ほどのマンションが通りをはさんで2棟立つようだ。予想していたこととはいえなんとも味気ない気分になる。最近「ホテルひかり」も壊されたので、駒込駅近辺のラブホテルは「江戸駒」と「グレースイン三千代」の2件だけになってしまった。どちらも相当年期が入っているので、今のうちに味わっておいたほうがよさそうだ


撮影：2010年10月
こちらは「ホテルひかり」跡地。全室鏡貼りが売りのラブホだった

駒込・アルパその後

2010年12月12日、近くを通りかかったついでにアルパがどうなっているのか確かめに行ってみた。建物自体はまだ変わらず残っているが、ご覧のように白い塀で各入り口はきっちりふさがれている。塀の、面一に処理されたいやに丁寧な仕事ぶりが、結果一種シュールな風景を演出している。取り壊しのアナウンスは見あたらないのでしばらくこのまま放置ということになるのだろうか。




撮影：2010年12月

駒込・さようならアルパ

駒込駅前にある老舗ラブホテル、アルパが突然閉店した。隣接する系列の3店舗全てが一度に廃業という激しい撤退劇。野暮な風営法のせいで面白くもなんともないホテルばかり乱立する中、昭和の貴重な意匠を持つ部屋を数多く残したホテルだった。これであの素晴らしい回転ベッドの部屋もスーパーカーの部屋も気球の部屋も山本晋也の部屋も二度と味わうことができなくなってしまった。かつて受付にいたお兄さんを見かけて「お世話になりました」と挨拶すると、一言「すみません…」と仰った


本館。従業員の方々があわただしく備品を搬出している


本館向かいのアルパパート2。都築響一さんの写真集「ラブホテル」などで有名な山本晋也の部屋はこちらにある


ガーデンワン。3店舗の中では一番キャラの薄いホテルだった


駐車場に出された備品の中にコイン式の貸し出し用ポラロイドカメラがあった。デジカメ登場前のまことに的を射たサービス。そのレンズは数多くのカップルの痴態を目撃したことだろう。一枚500円。その右に写るスピーカー台様のものは、パート2の「ウエディング・セレモニー」という部屋にあった祭壇と思われる
撮影：2010年10月

西巣鴨・庚申塚界隈の電線

撮影：2006年7月
とげ抜き地蔵の前を北上し、都電の線路を越えたあたり。縦横に走る電線は街の美観を損なっているということになるのかもしれない。しかしそれも昭和っぽい風景を演出するためには欠かせない要素のひとつだ。小金井にあるたてもの園が、あれだけ貴重な面白い物件を集めながらいまひとつ白けた感じなのはこれがないからだと思う。ごちゃごちゃの電線は生きた街の証しと言えましょう